自立循環プロジェクト フェーズ8 研究委員会 2024年度~2026年度(2024年8月現在、順次更新中)

研究背景と目的

2022年のロシアによるウクライナ侵攻後、エネルギー供給の見通しにおいて以前に比べ不安定な要素が露見したことをきっかけに、
エネルギー効率を向上する技術を導入しエネルギー需要を削減するとともに、代替エネルギー源や再生可能エネルギーへの移行など
エネルギーの多様化が求められている。地政学リスクの高まりや自然災害・異常気象と併せて、エネルギー価格の上昇に対し、
断熱性能の向上、高効率な給湯・暖冷房システムの導入といったエネルギー効率の高い建築設計のほか、再生可能エネルギーシステムの
活用も求められている。加えて、HEMSやBEMS、IoTといったエネルギー管理システムを導入することで、エネルギー消費量の削減とともに
需要ピーク時の負荷を分散し、エネルギーの効率的な利用や電力供給の安定化の促進が期待されている。
さらには、カーボンニュートラルを達成するため、建物のライフサイクル全体を考慮し、エネルギー効率を向上させるための取り組みの他、
再生可能エネルギーの利用といった建物の運用や廃棄物管理などの面でも持続可能なアプローチを取り入れることも重要である。
一方、アフターコロナによるライフスタイル変化に合わせ、十分な換気システムの導入、非接触型テクノロジーの活用、ホームオフィススペースや
共有ワークスペース等の柔軟な働き方に対応するためのスペースの確保など、安全と健康に関する対策の検討も急がれている。
以上の様な背景を鑑みて、エネルギーの安定供給やカーボンニュートラル、ライフスタイルの変化といった観点にも配慮しつつ、
本プロジェクトでは当初からのタイトルに掲げ従来から研究を積み重ねてきた「自立循環」の実現要件を整理し、
住宅・建築の省エネルギーに関する研究開発を中心として進めていくことを目的とする。

主な研究項目

①省エネルギー性能の評価方法の信頼性と簡便性の向上、脱炭素社会を見据えた新技術への適用範囲の拡張(各種設備システムの制御技術の反映を含む)
②実務者への設計・施工に関わる技術的知見の展開方策研究及び設計ガイドライン・省エネ評価用計算プログラム等の活用方策研究
③室内環境質(温熱、空気、衛生など)に係る技術開発及び設計法の整備
④未評価技術の省エネルギー設計・調整・試験方法に関する検討(JIS原案作成を含む)
⑤IoT等の新技術活用による低炭素・省エネルギー及び感染症等健康リスクの管理に関する研究

検討を予定している研究開発課題

  • 住宅主体の実施内容
    • 多様な全館暖冷房方式に対応した温熱・エネルギーシミュレーション手法の検討
    • 建築外皮に関する検討(全館暖冷房方式に必要な断熱・気密性の目安の提案)※
    • 潜熱を考慮した熱負荷および省エネルギー性能評価手法の検討※
    • IoT等の新技術活用による低炭素・省エネルギー及び感染症等健康リスクの管理に関する研究※
  • 非住宅建築物主体の実施内容
    • 建築設備の省エネ性能維持を目的とした設計法及び初期調整等手法の実用化推進
    • 冷却水系統の設計および運用手法に関する検討
    • 自然換気の負荷削減効果の評価方法と基準、ならびに評価に必要な基礎資料と評価ツールの作成
    • セントラル給湯システム全般の省エネ措置を確保した設計指針のさらなる充実
    • 建築外皮に関する検討(中小規模の非住宅建築の気密性、木造化)※
    • 潜熱を考慮した熱負荷および省エネルギー性能評価手法の検討※
    • IoT等の新技術活用による低炭素・省エネルギー及び感染症等健康リスクの管理に関する研究※
  • ※住宅・非住宅建築物双方を対象とする。

自立循環プロジェクト フェーズ7 研究委員会 2021年度~2023年度

研究背景と目的

  1. 国が目指している2050年の脱炭素社会の実現に対応していくにあたり、新規の建材・設備機器のそれぞれ及び既存技術も含めて組み合わせるための設計手法を対象として、省エネ効果を発揮するメカニズム、それを裏付ける理論及びデータの整備を進める。また、それにより省エネ性向上のための選択肢を拡充する。
  2. 既存及び新規に開発された技術を対象として、住宅・非住宅建築物の設計建設等実務者や政策立案者のための透明性が高く、わかりやすいガイドライン等の作成を進める。また、透明性や実証データによる解明が不十分な既存技術に関しても引き続き効果検証を行い、情報発信をすすめる。
  3. 2030年~2050年に向けたエネルギー供給側の動向についても国外も含めてフォローし、需要側に求められる機能の有無及び内容について検討を行う。
  4. 省エネ性能の確保だけでなく、①COVID-19感染症対応も見据えた健康性・快適性、②超高齢化社会やライフスタイルの変化への対応、③大規模災害時のレジリエンス、などを踏まえた設計・建設・維持管理手法の整備を進める。

主な研究項目

①省エネルギー性能の評価方法の信頼性と簡便性の向上、脱炭素社会を見据えた新技術への適用範囲の拡張(各種設備システムの制御技術の反映を含む)
②実務者への設計・施工に関わる技術的知見の展開方策研究及び設計ガイドライン・省エネ評価用計算プログラム等の活用方策研究
③室内環境質(温熱、照明、空気、衛生など)に係る技術開発及び設計法の整備、特にCOVID-19感染症対応を見据えた技術開発
④ライフスタイルの経年変化を踏まえた住宅及び設備機器の計画手法・設計手法の開発
⑤省エネ技術に基づく非常時の居住環境レジリエンシー向上技術の開発
⑥IoT、ICT等の新技術活用による種々の技術開発

検討された研究開発課題

  • 住宅主体の実施内容
    • 日射取得性能や空調領域、漏気も加味した空調負荷の検討、及び省エネ化に伴う不具合防止のための情報整理
    • 開口部最適化による暖房負荷低減および温熱環境改善に関する検討
    • 全館暖冷房方式の実態把握と新しい評価法の検討
    • レジリエンス向上技術の検討、及び複数の被災シナリオに応じた設計事例の検討
    • 省エネ技術・太陽光発電・蓄電池に関する最新動向の調査、及び実測データの分析、代表事例におけるシミュレーション
  • 非住宅建築物主体の実施内容
    • 空調設備の省エネルギー効果の推定方法検討(詳細なシミュレーションモデルの開発と公開)
    • 建築設備の省エネ性能維持を目的とした設計法及び初期調整等手法の実用化推進
    • 自然換気の負荷削減効果の評価方法と基準、ならびに評価に必要な基礎資料と評価ツールの作成
    • 熱源機器容量設計手法に関する検討
    • 給湯設備の省エネ性向上に向けた設計指針の作成
  • 双方共通の実施内容
    • 潜熱を考慮した熱負荷および省エネルギー性能評価手法の検討
    • ポストCOVID-19における空調・換気・通風計画のあり方の検討
    • 2050年における住宅・非住宅建築物のエネルギー・環境性能像に関する検討